【短編】井上さんの毛先が今日も


井上さんがまだ教室にいたらよかったのに───。


頭の中でなら、色々と妄想できてしまう。
好きなように、都合よく。


「はぁーあ」


軽くため息をついて、自分の席へと向かい、机の中にポツンと置かれたサイフを見つけてズボンのポケットにしまう。


今日も平凡な、何もない一日でした。


そう思って、席から離れようとした瞬間。


っ?!


人の気配がしたかと思うと、少し慌てた様子で誰かが教室に入ってきた。


───────夢かも。


きっちり膝までのプリーツスカート、真っ白いセーラ服に水色のスカーフ。


この小さな世界には、これを着てる人がうじゃうじゃいるのに、なんで、好きな人が着ているとこんなにも輝いて見えるんだろう。



しかも────────。

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