【短編】井上さんの毛先が今日も


「川澄くん、やった?英語の課題。私まだやってなくて明日提出なの忘れて……さっき多部ちゃんに教えてもらって慌てて…」


僕の目を見ないまま、少し早口で話す彼女。
多部ちゃんっていうのは、井上さんがいつも一緒にいる女友達。でも正直、英語の課題とか多部さんのこととかどうでもよくて。


だけど、彼女が僕に話してることがすごく嬉しくて、口角が上がるのを必死に抑える。


「僕はもう終わった」


「あ、、そうだよね……」


間違えた。完全に間違えた。違う。


ここは、やってないってことにして話を合わせるべきだった、それから、英語の授業の不満とかそういうのを言い合って……。


「じゃ、またね。川澄くん」


詰んだ。


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