最後の雨音は白い夜に消える
現実
ぱたぱたと、雨粒がガラスを叩いている。
そういえば、深夜から激しく雨が降ると、誰かが言っていた。
「うわ、最悪・・・」
起き抜けに、私は呟いた。
それは、
メイクのまま寝たことや、
コンタクトをはずさずに寝たことや、
寝ぐせがひどいことではなかった、
起きてしまったことが、最悪だった。
今見た夢の世界。
なんとなく覚えている。
私の夢じゃないそれは、
たぶん、こいつの夢だ。
姿勢よく、規則正しい呼吸で寝ている。
穏やかそうに、眠っている。
どういう理由か、私は、こいつの夢にいた。
びっくりして起きてしまったけど、
とても、もったいないことをした。
夢の中で、本音を聞き出したかった。
私のことを、どう思っているのか
この状況をいったい、どう感じているのか。
私たちの関係をどうしたいのか。
吐き出してしまいたい気持ちをこらえて、ぐっと飲み込む。
少し泣きたくなる。
ダメだ、ダメだ。
泣いたりなんかしない。
ごまかすように、シーツに顔をうずめる。
少し、彼のにおいがした。
甘い、木材のにおい。
よく、カブトムシみたいとイジったにおい。
私の好きなにおい。
彼に包まれているような、幸せな錯覚におちいりながら、
私は、穏やかに、夢の世界に戻った。