最後の雨音は白い夜に消える
みっつめの夢
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「うわ!?」
小さく悲鳴をあげる。
涙を拭いて、目を開けると、世界がななめに傾いていた。
しかも、もう夜の屋上ではなく、隣の県の遊園地だった。
急な変化には驚いたが、なんとなくタイミングがつかめてきた。
ここも、思い出の場所。
こんなに、傾いてなかったけど。
建物も人も、地面からななめになっている。
私だけが、まっすぐ。
こうなると、私の方が異常なんだろうな。
ななめなことはさておいて、この遊園地には、よく来た。
あいつの手を引っ張って、アトラクションからアトラクションへと走った。
あいつの頭で15周年限定のうさぎの耳が揺れる、
手を引っ張るわたしの頭には、ねこのキャラクターがちょこんと座っている。
あいつの手には、回り方をメモしたノートが握りしめられている。
ふたりで、一番いい回り方を話し合った。
アトラクションの順番、パレードはいつ見るか、ご飯はどうするか、予算は、ルートは、お土産かで悩んだ。
話し合って、食い違って、じゃれあって、押し倒されて、
あの時の、あいつの顔、向こうの天井、空気の流れ、唇に残った感触。
全部覚えている。
恥ずかしくて死にそうで、
嬉しくて爆発しそうで、
幸せすぎて溺れそうで、
涙が出そうだったから、
照れ隠しに「ムードがないっ!」て、怒った。
大切な思い出。
心の中で、変わらずに輝き続けている。
思い出す度に、わたしの心をあたためてくれる。
今のわたしの不幸は、
あの時、幸せだったから。
たぶん、そうだ。
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