癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
ひとしきり泣いた後、遙季が目線をあげると雅祥がニコニコと微笑んでいた。

遙季は、雅祥が差し出したティッシュの箱から1枚ティッシュを取り出すと、豪快に鼻をすった。

「赤鼻のトナカイさんだね」

雅祥は笑いながら、遙季の鼻をつついた。

「む、、、、。先生ってスキンシップが多すぎませんか?セクハラですよ」

やっと言葉を話した遙季を見て、雅祥が破顔した。

「遙季ちゃんがお話ししてくれるなら、これくらいのセクハラはするよー」

両腕を組んで、エヘンと胸を張る雅祥は偉そうで、また笑ってしまった。

馬鹿ばかし過ぎて、何もかも話してしまいたい衝動にかられた。

そんな遙季の心を感じたのか、雅祥は

「怖いと感じたら、目を左右に動かしながら話すと気が紛れるよ」

と笑った。

端から見ると変な感じだが、やってみるとこの方法は、素直な遙季には効果覿面だった。

遙季は、昨日の放課後に若菜から言われたこと、光琉との登下校が原因で事件に巻き込まれたらしいこと、現場に近づいたり光琉と一緒にいることを避けてしまうこと、フラッシュバックや解離症状、不眠、不安、集中力低下等の症状があることを伝えた。

「なるほど」

雅祥は、ふむふむと相槌を打ちながら話を聞いていたが、納得したように最後は大きく呟いて

「遙季ちゃん、君の症状の大部分はASD゛急性ストレス障害゛と呼ばれるものに当てはまる」

と真剣に語った。

「よく聞いてね。知っていることは武器になる。知らなければただ怯えるだけだ。だから、これから君はその戦う武器を手にいれて自分なりの戦術を組むことにしよう」

そういって、初めて雅祥はお医者さんのような?顔をして話始めたのだった。

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