癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
「はぁ」

光琉が遙季から唇を離したのは5分以上が経過した後だった。

「,,,ここまで本当に長かった。今日は帰さないからそのつもりで」

「,,,光琉!」

遙季は自分に抱きついたまま離れない光琉の背中を軽く叩いた。

「お前がトラウマを克服するために、色々学んできたように俺も沢山勉強した。もうそろそろ、俺と向き合ってくれてもいい頃じゃないか?」

遙季は、自分を見つめる光琉から目を逸らした。

「遙季」

遙季の顎を持ち上げ、拳1つしか空いていない距離で光琉が見つめている。

8年間の距離を、まるでなかったかのように飛び越えてくる光琉に遙季は

゛観念する時が来たのかもしれない゛

とため息をついた。

光琉の気持ちには気付いていた。

遙季に幼なじみ以上の感情を抱いていることも、側にいてほしいと願っていることも。

だからこそ離れた。それでもこうして光琉は遙季を追いかけてくる。

「光琉、お腹すいた」

遙季は、観念して光琉と一緒の時間を過ごすことを決意した。

「夜景も,,,ありがとう」

光琉がガバッと体を起こす。真っ赤になって俯いている遙季を見て満面の笑みを浮かべる。

遙季の覚えている限りでは、光琉が20歳の時以来の本当の笑顔だ。

゛光琉の笑顔を奪っていたのは私゛

遙季は思い出してしまった光琉への恋心に胸が引き裂かれそうになっていた。

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