癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
話してみると、クラスマッチのことは明日でも良かったのではないかというほどどうでもいい内容だった。

「ねえ、八代くん。今日は一人なの?それなら,,,私と一緒に帰らない?」

恥ずかしそうに頬を染めた若菜は男子生徒からモテる。

光琉も少しは可愛いと思っていたが、遙季には到底及ばない。

「悪いけど、急いで帰らないといけないから」

「じゃあ、私の運転手に八代くんの家まで送ってもらうように言おうか?」

若菜の家は金持ちだ。中村産業コーポレーションという建設会社の社長令嬢と聞いていた。

「ごめん」

これまでも、誕生会だとかホームパーティーとか、ことある毎に声を掛けられた。

自分に気があることはわかっていたが、まさか遙季に手をかけていたなんて,,,。

急いで駅までの道のりを急ぐ。

放課後の賑わいと打って変わって、19時を過ぎるとこの通りは人通りが極端に少なくなる。

その当時、駅周辺では、大学生を中心に大麻やシンナーといった薬物の売買が行われているとの噂もあった。

駅に近づくと、パトカーと救急車が走り去るところだった。

何かあったのだろうか?

胸騒ぎを押さえて、光琉は自宅へと急いだ。
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