癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
「あの時のこと、話すのはまだ怖いか?」
向き合って抱き合う光琉が、真剣な眼差しで遙季を見つめている。
月明かりが照らす美しい顔に、いつもの眼鏡はない。
綺麗な星空と月が、なんだか、遙季を素直にさせる魔法をかけているみたいだ。
「あの日、中村さんから、光琉が先に帰るように伝言したって聞いて、私も本当は半信半疑だったの。メッセージもないし」
遙季は苦笑して言った。
「うん」
人の話を聞きたいなら遮らずに待つのが鉄則だ。
「外は暗いし、人はいないし、光琉が一人で帰るな、って言った理由がわかった気がした。だから慌てて走り抜けようとしたら,,,あの人がビルの間に引きずり込んで」
光琉は遙季の体が震えているのに気がついた。
「ゆっくりでいいから」
こくん、と遙季は頷いてため息をついた。
「はじめは、自分のテリトリーで私と光琉がイチャイチャするのが目障りだから、別れろ、って言われた。幼なじみだって言っても信じてもらえなくて、別れて俺と付き合えって訳のわからないことも言われて,,,」
遙季は光琉の顔を見上げた。
「ナイフを突きつけられて、ものは悪くないって、制服を,,,。ボタンが飛んで、襲われるって怖くなって」
涙を浮かべる遙季の言葉を遮って"もういい"と言いたくなるのを、光琉は必死で我慢した。
「その時、悠生が来たの。たまたま近くの本屋に寄ってて、私を見かけたから追いかけて来てくれたらしいの」
遙季は再びため息をついて深呼吸をした。
「悠生を巻き込まないで、って言ったらあの人、ポケットからビニールを出して、中のシンナーを吸い始めた。そして、私の腕を切りつけて、悠生の肩も切りつけて,,,」
遙季は光琉にギュッと抱きついたが、もう震えてはいなかった。
「後は、光琉も知ってる通りよ」
と、言って遙季は悲しげに微笑んだ。
向き合って抱き合う光琉が、真剣な眼差しで遙季を見つめている。
月明かりが照らす美しい顔に、いつもの眼鏡はない。
綺麗な星空と月が、なんだか、遙季を素直にさせる魔法をかけているみたいだ。
「あの日、中村さんから、光琉が先に帰るように伝言したって聞いて、私も本当は半信半疑だったの。メッセージもないし」
遙季は苦笑して言った。
「うん」
人の話を聞きたいなら遮らずに待つのが鉄則だ。
「外は暗いし、人はいないし、光琉が一人で帰るな、って言った理由がわかった気がした。だから慌てて走り抜けようとしたら,,,あの人がビルの間に引きずり込んで」
光琉は遙季の体が震えているのに気がついた。
「ゆっくりでいいから」
こくん、と遙季は頷いてため息をついた。
「はじめは、自分のテリトリーで私と光琉がイチャイチャするのが目障りだから、別れろ、って言われた。幼なじみだって言っても信じてもらえなくて、別れて俺と付き合えって訳のわからないことも言われて,,,」
遙季は光琉の顔を見上げた。
「ナイフを突きつけられて、ものは悪くないって、制服を,,,。ボタンが飛んで、襲われるって怖くなって」
涙を浮かべる遙季の言葉を遮って"もういい"と言いたくなるのを、光琉は必死で我慢した。
「その時、悠生が来たの。たまたま近くの本屋に寄ってて、私を見かけたから追いかけて来てくれたらしいの」
遙季は再びため息をついて深呼吸をした。
「悠生を巻き込まないで、って言ったらあの人、ポケットからビニールを出して、中のシンナーを吸い始めた。そして、私の腕を切りつけて、悠生の肩も切りつけて,,,」
遙季は光琉にギュッと抱きついたが、もう震えてはいなかった。
「後は、光琉も知ってる通りよ」
と、言って遙季は悲しげに微笑んだ。