癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
「じゃあ、俺たち帰るよ」

「おう、次は来月な」

両親は呆気ないもので、四人で宴会を始めて、もはや遙季を振り返ろうともしない。

上機嫌な光琉は、遙季の手を引き、車に押し込んだ。

「もう、何てことしてくれるのよ。私が同意しなかったらどうするつもりだったの?」

光琉はニヤリとしながら眼鏡を持ち上げた。

「言ったろ?自信があったって。結婚しちまえば、ギャラリーなんて関係なくなるだろ」

車のエンジンをかけた光琉は、乱暴にハンドルをきった。

「なんか疲れた,,,。寮に帰って寝るから送って」

「無理だな」

「無理って,,,。ねえ、お願い、光琉」

信号待ちの合間に、上目遣いに甘えた声で光琉の腕に寄りかかる遙季。

「ねえ、だめならここで降ろして。バスで帰る」

「俺に甘えたいのはわかったから」

遙季の頭をポンポンと叩いて、微笑む光琉がわかってくれたものと思っていたのに

「ちょっと、どこ行くの?こっちじゃないよ。職員寮」

「いや、ついたぞ。お前の家」

駐車場から見上げたおしゃれなマンション。そこは

「何ここ?」

「俺とお前の愛の巣」

そう。遙季の寮の荷物は、既にすべてこのマンションに搬入された後だった。

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