癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
策士とツンデレの未来
「中村さんから加藤さんのことを聞いて、驚いてメールも電話もしたのに、遙季、何で出ないんだよ。心配しただろ?」

「だからちゃんと後でSNSのメッセージ飛ばしたでしょ」

光琉の車の中、コンビニで買ったペットボトルのお茶を飲みながら遙季は苦笑して言った。

加藤が私立探偵をつけていた相手は、光琉ではなく若菜にだった。

様子がおかしい若菜を心配した努が、探偵に若菜のあとをつけさせたら、光琉と一緒のところが写真に写り、怒りに任せて今回の件に利用しようとしたのだ。

若菜は、怪しい動きを見せる努が気になって、光琉に気を付けるようにと助言をしてきたらしい。

「でも、加藤さんの話を聞いて、あのときやっぱり光琉と離れて良かったと思ってる」

光琉が怪訝な顔をすると、

「だって私達が離れたから復讐を止めたって言ってたでしょ?大人になった今だから、それぞれの事情を理解できるようになった今だからこそ、上手くおさめることができたんだよ。うーん、やっぱり思春期は難しいね」

と、首をかしげて遙季は笑った。

黙りこんだ光琉は、真っ直ぐに前を向き、怒ったように、マンションに着くまで一言も話さなかった。

マンションに着き車を停めると、運転席から降り、徐に助手席のドアを開けて遙季の腕をつかんで車から降ろした。

「光琉?」

光琉はエレベーターのボタンを押したあと何も言わない。

玄関の鍵を開けると、光琉は遙季を抱き締め、髪の中に顔を埋める。

「,,,ただの逆恨みで、俺たちの時間を奪う権利があいつらにあったのか?俺は遙季の側にいたかった。ただそれだけのことなのに、なんでダメだったんだ!」

吐き出すように囁く光琉は悔しくて堪らないといった顔をしていた。

「私に近づくなって言ってもちっとも言うこと聞いてくれなくて、策士で、俺様で」

クスッと笑うと

「光琉,,,ごめんね。ずっと困らせてたね」

遙季はそっと光琉の背中に腕をまわす。

「好きだよ。ずっと、ずっと。自分のことなんてどうだっていいくらい」

「,,,遙季」

泣きそうな表情の光琉は、

「今度こそ、絶対に離してやらない!」

と遙季を抱き締める腕に力をこめた。

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