冥界の王子様





控え室に戻った私は早く着替えを済ませ
トウマくんを探した。






会ってお礼をしないと。

その一心で。






だけど、どこにも見つからない。





帰ってしまったのかな。





トウマくんにはちゃんと
伝えなきゃいけないことがある。






はぁ…はぁ…はぁ……








「玲奈?」





「トウマくん……」





「ど、うしたの?」





「よかった。帰っちゃったかと思った」





「まぁ、帰ろうとはしてたけど」





「私、私。
トウマくんと過ごした一年は宝物だよ。」





「うん。俺も」





「トウマくんがいたから
リクとこうやって結婚することができた。

トウマくんがいなかったら
大切な人を見失っちゃうところだった。


ありがとう。」






「フッ会わないほうがよかったな」






「え?………」






「もう俺の出番は終わりみたいだから」






「…。…。」






「そんな顔すんな」




優しく笑うトウマくんは
昔まれに見た笑顔に戻っていた、





「お前は颯に幸せにしてもらえ」





「う、ん」





「次はもう家においてやんねぇからな」





頭をポンポンと撫でて行ってしまった




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