冥界の王子様
「あの……」
私は重たい口を開いた
「言いたくないことは言わなくていい。」
「………え?」
「なに?聞いて欲しいの?」
「あ、いや。そういうわけじゃ
「大丈夫なら大丈夫
大丈夫じゃないなら
「大丈夫じゃないなら?」
「大丈夫じゃない
それだけでいい。
言いたくないことを無理に聞かねーよ。
誰だって触れられたくないことくらいあるだろ」
その時わかった。
この人はすごく優しくて
人の傷を理解できる人なんだって。
私はあなたのその優しさに溺れる。
そんな気がした。
目からつーと落ちる涙。
人の前で泣いたのなんていつぶりだろう
お母さんのお葬式だって
私は泣くのを我慢した。
あのお父さんを前にして涙を流すなんてことできなかったから
そんな私をそっと抱きしめる
暖かいぬくもりは
私の心を刺激する。
こんな思いしていいのかな、おかあさん。
お母さん
私はどう見えてますか。