冥界の王子様
整いすぎてるくらい綺麗な顔に
どこか寂しげな表情は
人を引きつける。
「…マ、り……」
あなたは隣にいる私をよそに
残酷にも他の女の人の名前を呼んだ。
まり?
誰かの名前?
胸のざわめきは治ることを知らない。
誰なのか聞きたいのに聞く勇気はない
「玲奈だよ?」
私はマリさんって人じゃない。
そう必死に訴えた。
「玲奈か…
(ギュッ)」
そのつぶやきは
お前なのかという落胆?。
今の私にはその選択肢しか出てこないほど
自信を失っていた。
さっきまでの自分なら
この抱きしめられてる状態に
心ときめいてただろう。
なのに今の私はされるがままで
体と心が引き離されているような感覚。
はじめに拒絶してしまったのは私なのに。
私にもたれかかるように寝てしまったリクさんを
動かす力は私になくて
抱きしめられたまま
再び眠りについた。