【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
目の前のディスプレイの数字が次々と変わっていく。株価の確認をしながら株式の買い付けの時期について、電話で顧客との相談を重ねる。

「権利落ちしてすぐになるので、たしかに買い時ではあります。

例年の同時期よりも株価が高いのは、この会社の年間を通じての平均株価が上昇しており――」

自分の知る限りの情報と提案をして、顧客から注文を受ける。

あとは約定(やくじょう)を待つだけなので、また連絡しますと伝えて受話器を置いた。

すぐさま目の前の電話が鳴った。他の社員が対応する前に率先して電話を取る。

次もまたその次も。自分の仕事をこなしながら、こまごまとした雑事もいっぺんに引き受けていた。

「尾関さん、研修明けからやる気がみなぎっているね~そんなにいい内容の研修だった? 私のときはなかったからね。そういう小難しい研修は」

わたしの様子に宮沢課長はうれしそうだ。それもそのはず。

わたしは研修から戻ってきたあと、新規の大口顧客の契約にこぎつけたのだ。

運がよかったのもある。前から何度か足を運んでいた顧客だった。

新しい商品が発売されたタイミングで紹介をしたらそれを気に入ってくれたのだ。

「尾関くんの粘り強さは、以前から評価していたんだよ。やっと花開いた」

ものすごく機嫌のいい課長は、わたしをべた褒めした。
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