【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
やっぱりちゃんと話をしよう。

そう思って口を開きかけたとき廊下側の扉が開き、受付けのひよりちゃんが顔を出した。

「あ、よかった。尾関さん店頭にお客様がお見えです」

チラッと時計を見ると、約束の時間まであと十五分あった。

しかしお客様を待たせるわけにもいかず、「すぐに行きます」と答えた。

「この話はまた後でしましょう」

芽衣子さんは、廊下へつながる扉を開けてくれている。

「すみません。何から何まで」

優しい気遣いに頭を下げながら廊下に出た。

続いて出てきた芽衣子さんは、わたしを元気づけるようにポンッと肩をたたいた。

「生きていれば、ひとりじゃどうしようもないこともあるから。ね?」

「はい」

わたしはできる限りの笑顔を見せて、お客様の待つ一階の店舗へと急いだのだった。
< 109 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop