【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
カウンターへ向かうと、新規の契約をいただくお客様がお待ちだった。

「お待たせしてすみません」

「いえ。こちらこそ、早く来ちゃって。歳とったせいか、最近せっかちになってね」

ロマンスグレーの紳士、城崎(しろさき)さんは、にっこりと品のある笑顔を向けてくれた。

「いえ、お越しくださいましてありがとうございます。

こちらにまずはお持ちいただいたモノを確認させていただいてよろしいでしょうか?」

記入いただいた口座開設の申込書や、マイナンバーや本人確認書類の抜けがないか確認していく。それが終われば本日の手続きは終了だ。

インターネットを使って開設する方が便利なのだが、年配の方はやはり店頭での直接のやりとりを望む方も少なくない。

市場の状況などの世間話を交えつつ、手続きをしていたときだった。

店の入り口の自動ドアが開いて、入ってきた人物を見て驚いて固まってしまう。彼もこちらに気がついたようで、まっすぐに見つめてきた。

その顔はいつもの彼から感じる柔らかい雰囲気はなく、わたしを責めるような強い視線を向けてきていた。


神永さん……。
< 110 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop