【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「やれやれ……当日でもあれこれやることがあって、やっと君に会えた」
バタンとドアが閉じると、貴哉さんはわたしの近くに来てまじまじとドレス姿を見た。
「ああ……恵麻。世界一綺麗だよ」
まぶしそうに目を細めて賛美を送ってくれる。恥ずかしいけれど、本当にうれしい。
貴哉さんがそっとわたしを抱きしめてくれた。
「もっと色々したいけど、せっかくのドレスとお化粧がダメになるといけないから」
お互い見つめ合って、ふふふと笑った。
その彼の視線が、ふと窓際に移る。
そこには初めてのデートで買ってもらったピンクのペンギンが置いてある。
「あれ、ペンギンこんなところにまで持ってきたの?」
「わたしたちの思い出の品なので」
わたしがペンギンを手にとり、貴哉さんにそっと渡した。
彼はそれを受け取ると耳元にペンギンを持って行き、左手をぎゅっとにぎった。
静かな控え室に、録音されたわたしの声が響く。
それを聞いた貴哉さんが、目を見開いたまま固まった。