【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛

 え、じゃあ本気なの?

 またもや本心がわからず混乱してしまう。

 もう、どうして神永さん相手だとこうもペースを乱されてしまうんだろう。

 他のお客様とのやりとりでは、こんなことないのに。

「……尾関さん?」

「あ、はいっ!」

 自分の世界に入り込んでしまっていたわたしは、神永さんの声で現実に引き戻された。

「どうかしましたか? なにか困ったことでも?」

 あなたと話をすると、混乱してしまいます――なんてもちろん言えない。

「いえ、何でもありません。では、少しお話を伺ってから……商品のご提案をさせていただきますね」

「はい。よろしくお願いします」

 気を取り直し、そして気合いを入れ直して、神永さんの資産運用に関する考え方を聞き出した。

 それから先は真剣に仕事をするわたしに、神永さんも応えてくれた。どういった目的で資産の運用をするのか、どういったタイプの投資が好きなのか。

「わかりました。では後日、改めて提案させていただきますね」

「え?」

 最後のわたしの言葉に、神永さんは驚きの声を上げた。

「いかがいたしましたか?」

 何か気になることがあるのだろうかと気になり、尋ねた。

「いえ、あの、口座開設の書類とか必要ないのですか?」

「あぁ……それですか」

 正直いってすぐに口座開設をしてほしい。そうすれば新規顧客の今月のノルマは達成できる。
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