【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
わたしの目から見ると彼は親しみやすく、失礼だがそんなに辣腕には見えない。経済誌などに取り沙汰されている姿とは一致しない。
どっちが本当の彼なんだろう。
いや、どっちでもいいじゃないの。仕事には関係ないんだから。
いろんな考えが頭を巡るのを断ち切って、中に入った。
「いらっしゃいませ。ご用件をお伺いします」
すぐに黒いスーツの女性が笑顔で出迎えてくれた。ネームプレートには坂上(さかがみ)と書いてある。
「わたくし、尾関と申します。社長の神永様とお約束しているのですが」
女性はさっとわたしの頭からつま先までをチェックする。その後、わたしと目が合うと「失礼しました」といい、わたしをテーブルに案内して座るように促した。
離れた場所のテーブルでは、二組のカップルが結婚式の打ち合わせをしている。カタログをめくりながら相談する新郎新婦はすごく幸せそうだ。
色々なサンプルが置かれており、大きなテレビのスクリーンにはイメージDVDが流れている。それらを眺めていると、声をかけられた。
「尾関さま、ただいま神永は電話中でして。しばらくお待ちいただければと思います。お飲み物をお持ちいたしますので、こちらからお選びください」
「ありがとうございます。では、こちらのハーブティーを」
「かしこまりました。そのお茶、女性のお客様には人気なんですよ」
にっこりと笑った女性社員は、最初にわたしにぶつけてきた不躾な視線とは違い笑顔を浮かべて、事務所の方へ戻っていった。
急な対応の変化に首を傾げていると、香りのよいお茶を持って戻ってきた。