【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「あんな優良顧客見逃してどうする。絶対ほかの会社にとられるな。尾関さんが必ず落としてくるんだ。まずは社長個人の資産運用を--そしてひいては法人としての取引を、そこまでくれば……あははは」

 捕らぬ狸の皮算用とはこのことだ。想像してうれしくなってしまったのか、課長はとうとう声を出して笑い出した。

 ぞろぞろと役職付の社員たちが、立ち上がり会議に向かい始めたところで、やっと課長に解放された。

 自席に戻り小さなため息をつく。

「朝からお疲れ様」

 わたしのため息を見逃してなかった芽衣子さんから、すかさず声がかかる。

「あはは。まぁ仕方ないですよ。事実ばかりですから」

自分でも自覚していたのだけれど、改善できていなかった自分が悪い。

「まぁ、いいときもあれば悪いときもあるって。それに課長の言うとおりケイウエディングの誰だっけ? えーっと、神永貴哉(かみながたかや)社長。本当に契約してもらえれば、こっちのもんじゃない?」

「芽衣子さんまで……」
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