【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
車が動きだすと神永さんは、背もたれに体を預けて「ふぅ」と大きな息を吐いた。
「病院に行きますか?」
苦しそうな彼の様子を見て、そう尋ねた。
「医者には昨日看てもらったから、大丈夫。申し訳ないけれど自宅までお願いできますか」
「わかりました。安心して休んでいてください」
「そうさせてもらう。ところで尾関さん運転は?」
「五年ぶりです。だから話しかけないで!」
教習所で習った通り十時十分の位置でハンドルを握り、前のめりで運転する。
勢いで運転を買って出たけれど、そもそもそんなに運転が上手なわけではない。
とりあえず、ぶつけないように神永さんを送り届けなくては。
必死で運転をするわたしを見た神永さんは、クスクスと笑い出した。
「俺が運転したほうがよかったんじゃないかな?」
「だ、大丈夫ですから。とにかく目をつむって黙っていてください。集中できません!」
このときのわたしは、なんとか神永さんを無事に送り届けることだけを考えていた。