【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「食べさせてくれないの? 病人なのに」

「そんな、スープくらい自分で飲めますよね?」

「そんな、だってさっきタブレット見てたでしょう? だったらスープぐらい自分で食べられるはずです」

 不満そうにしていたけれど、諦めた彼はわたしに手を差し出した。

 膝の上にトレーを乗せてあげると、すぐにスプーンを取りスープを掬った。少し冷めてちょうどいいくらいになっていると思う。

 大きな口を開けて食べる彼の反応が心配だ。

 いつもおいしいものを食べている彼の口に合うだろうか。

「おいしいよ。やさしい味がする」

「よかった。食べられるだけ食べてくださいね」

 感想を聞いてほっとした。

「実家にいたとき、風邪をひくと母がよく作ってくれていたんです。体があたたまって、少し楽になるはずです」

「あぁ。全部食べられそうだ。次に尾関さんが体調崩したら俺がこれを作ってあげる」

「料理するんですか?」

 さっきの片付きすぎているキッチンの様子から、あまり使われていないと思ったのだけれど。

「いや、全然」

「ふふっ、じゃあ遠慮しておきます。どんなスープができるのか少し興味がありますけど」

「そうだな。悪化させたらいけないしね」

 軽口を聞きながら次々に口に運ぶ彼の姿を、わたしはずっと見ていた。

 あっと言う間にすべてをお腹に収めると、手を合わせて「ごちそうさま」と言ってくれた。
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