【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「お粗末様でした。これ、お薬です。カウンターの上にあったので勝手に取ってきちゃいました」

「ありがとう。本当に助かる」

 神永さんはわたしから薬を受け取ると、トレーに置いてあった白湯でお薬を飲んだ。わたしはその飲み終わったコップを受け取り、彼の膝からトレーを取る。

 さっきに比べると少しはマシになっているけれど、よく見ると疲れた顔をしている。

 会社を経営するって本当に大変なんだ。さっきも仕事していたし。

わたしは取り上げたタブレットに視線を移した。時間が経っているので画面には何も映っていない。

 立ち上がりついでに、それも手に取った。

「これ、預かっておきますね。そうじゃないと、また仕事しそうだし」

「あはは……もう、バレてるな。今日は言う通りにする」

 提案を受け入れてくれて、ほっとした。

「片づけたら、帰りますから」

「あぁ。ありがとう。おかげで明日にはよくなりそうだ」

 ベッドに横になった神永さんが目をつむったのを見て、わたしは寝室の電気を消し、フロアランプの灯りだけにしてドアを閉めた。

 キッチンに向かって洗い物を片付ける。

 それと同時に残ったスープにオリーブオイルやケチャップを足して少し味を変えた。そうすれば明日の朝でも気が向けば食べてもらえるかもしれない。

 買ってきたグレープフルーツの皮をひと房ずつ剥いてラップをして冷蔵庫にいれておいた。

 こうやっておけば、ひとり暮らしの男の人にでも食べやすいだろう。

 ここまでして自分の手帳からメモを一枚破り、置手紙にそれらを記しタブレットと一緒に置いておく。

 それから、寝室に向かいそっと扉を開ける。神永さんはよく眠っているようだ。

 部屋に入り彼の様子を窺う。
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