【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
わずかな灯りの中なので、顔色まではわからないけれど、規則正しい寝息を聞いて安心した。
明日には良くなっているといいですね。
わたしはベッドサイドにしゃがみ込むと彼の顔をみつめて、心の中で語りかけた。
エスポワールで車の中にいる彼を見たとき、体調の悪そうな姿にここまでおしかけてきてしまった。今思うと後先考えない大胆な行動だと思う。
しかしあのときはこうすることしか思いつかなかった。
何かしてあげたい。彼の助けてあげたい。
そういう思いがわたしを衝動的に突き動かしたのだ。
……どうしてなんだろう。
その答えをわたしは知っているような気もする。
でも彼はお客様で、大会社の御曹司で……色々考えているうちに慌ただしい一日のせいで疲れ切っていたのか、わたしを睡魔が襲った。
ダメダメ、帰らないと。
そうは思うけれど「ちょっとだけ」と心の中の自分がささやく。
そして彼の心地のよい寝息に誘われるようにして、わたしは眠りの淵に落ちていったのだった。