【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
これまで神永さんと一緒に並んで歩いたことだってあるけれど、こんなふうに距離が近かっただろうか。
彼がいるわたしの右側だけがやけに熱い――気がする。
「――さん、尾関さん。チケット持ってきた?」
「え、あ。はい! ちゃんとここに」
歩きながらバッグの中から取り出そうとする。手元に集中しすぎていて、うっかり躓いてしまう。
「わっ」
「あぶないっ!」
とっさに神永さんの手がわたしの腕を握る。そのおかげでなんとか転ばずにすんだ。
「ほんっとうに、すみませんっ!」
「いや、間に合ってよかった。それにチケットも見つかったみたいだし」
彼の視線がわたしの手元に向けられた。わたしはしっかりとチケットを握りしめていた。
「重ね重ね、申し訳ございません」
始まったばかりで、こんな失態ばかりで恥ずかしくなりまともに顔を見ることができない。
ずっとそうしているわけにもいかず、チラリと神永さんの方へ視線を向ける。
すると彼は何かに耐えるように口元を押さえて、わたしから目を逸らすようにしていた。
次第に彼の肩が揺れ始めて。