【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「そうはおっしゃいましても、そのままお返しするわけにはまいりません」
声をかけられて、はっとした。無意識のうちに失礼なほど見つめてしまっていた。
我に返ったわたしは、自分の置かれた状況に目を向ける。
たしかにネイビーのドレスはびちょびちょだ。どうしようか?と迷う間もなく、目の前に一着のワンピースが差し出された。
「こちら、うちの商品のブライズメイド用のワンピースです。お客様の洋服の代わりにはなりませんが、とり急ぎこちらのワンピースでご容赦いただけないでしょうか?」
「ご容赦って……」
差し出されたワンピースは、淡いピンク色のサテン生地のものだ。ノースリーブでスカートは綺麗なシャーリングがきいており、ウエストのところでリボンを結ぶことで、かわいらしく着こなせそうだ。
あきらかにわたしが着ているものよりも、高級そうだけど。
「あの、そこまでしていただくことはありませんので」
よく見ていれば、拭えばなんとか着て帰れそうだ。
「それでは、こちらの気がすみません。お客様のワンピースはわたくしどもが責任をもって専門業者にてクリーニングにださせていただきますので」
「いえ、滅相もない!」
専門のクリーニングならば、高額になるに違いない。そこまでしてもらうほど汚れてはいない。