【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
思わず子供のように水槽に顔を近づけて、奥のほうまで覗き込む。
「綺麗だな。あ、あっち、なんか潜った」
「え? どこですか?」
わたしの隣にいる神永さんも、同じようにガラスに顔をくっつけそうなほど近くで水槽を覗いていた。
「あ、あれですね。チンアナゴだ」
「へ~詳しいんだ」
水槽に向けていた顔をわたしの方へと向けたのがガラスに反射して見えた。
「あれぐらい、誰でも知ってますよ」
「そう? 俺水族館なんて、子供の時以来久しぶりだから」

「あれ、デー……」

デートとかで来なかったんですか?そう口に出しそうになってとっさに口を閉ざした。

今の楽しい雰囲気を無理に壊すことなんてないし。

ううん。今その答えを聞いてショックを受けたくないって、ただそれだけ。

「デ?」

言いよどんだわたしの顔を神永さんが不思議そうに見ていた。わたしは咄嗟にごまかす

「で、で、……デンキウナギっているんですかね?」

「デンキウナギ?」

わたしは必死になって何度もうなずいた。

「見たいの? いるんじゃないかな? あっち探してみよう」

「はい」

あぶない、あぶない。うっかり変なこと口走らないようにしないと。

いつもと近い距離にいる神永さんを完全に意識してしまっている。だけどこのドキドキが心地良い。

今の瞬間がとても大切なものに思えた。


< 90 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop