【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
そんなわたしを見て神永さんは、クスクスと楽しそうに笑っていた。
もう、またからかわれた?
館内が薄暗くてよかった。そうじゃなければきっと赤くなってしまっている頬や耳を彼に見られて、もっと笑われてしまいそうだ。
「次に行こうか」
ゆっくりと手を引いて歩き出した彼について行く。
早くもなく遅くもなく、わたしの歩調に合わせて歩いてくれる。その気遣いがうれしい。
彼のひとつひとつの行動が、今日はやけに胸に響く。そしてドキドキが大きくなって身体中を駆け巡っていた。
彼から半歩下がって歩きながら、じっと見つめる。まさかこんな時間をふたりで過ごすことになるなんて……。
「尾関さん」
「ひゃいっ!」
急に振り向かれ、驚いて変な声を出してしまった。それも彼のツボに入ってしまったのか、おかしそうに笑っている。
さっきから、こんなのばっかり……。
ちょっとがっくりしているわたしの視線の先に、ペンギンの姿が目に入った。
「わぁ! どうしてこんなところに」
通路には飼育員の後に続いて五匹のペンギンが散歩をしていた。
「かわいいっ!」
まるで女子高生のような声をあげてしまった。でも可愛いモノはかわいいのだから仕方ない。