【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛

「では、どうぞ」

飼育員や周りのお客さんに見守られながら、そっとペンギンに触れた。

「わ~ザラザラしてる。もっと柔らかいと思っていたのに」

何度か往復してその感触を楽しむ。

「この子はオスですか? メスですか?」

わたしの質問に飼育員が答えてくれた。

「オスです。だから今、綺麗なお姉さんに撫でてもらって、とっても喜んでいますよ」

「お世辞でもうれしいです」

さすが接客業。リップサービスも上手だ。

「それは困りましたね。今日の君のデートの相手は俺なのに」

それまで別のペンギンを撫でていた神永さんが、わたしたちの会話に急に割って入った。

「また、そんなふうにからかわないでくださいっ」

もうそろそろこの手のからかいに慣れないと、心臓がいくつあっても足りない。

「本気なのに、ひどいな。俺だって、君がなでてくれると喜びますよ」

「な、なに言ってるんですかっ」

ひとまえでなんという恥ずかしいことを。

しかし顔を赤くして恥ずかしがっているのはわたしだけで、神永さんは平然としていて、むしろ楽しんでいるようだった。

「ペンギンにまでヤキモチやいてくださるなんて、いい彼氏さんですね」

飼育員の男性の言葉をあわてて否定する。

「いや、彼氏じゃーー」

「そうなんです。俺の気持ちがなかなか伝わらなくてね。苦労します」

やれやれといった表情の神永さんに、男性も同情めいた顔をしてうなずいていた。
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