【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
楽しい時間は本当にあっという間で、わたしたちは館内の出口近くにある土産物売り場にいた。

クッキーやキャンディーなどの食べ物、キーホルダー、それにぬいぐるみたちが所狭しと並んでいる。

わたしたちはそれらに見送られながら、水族館を出て神永さんの車に乗った。

一度目は勢いで乗ったし、しかも運転席だった。

助手席のドアを開けられてすすめられると、それだけで自分が大切にされているような気がしてうれしかった。

まぁ、神永さんくらいの大人だったら、こんなことなんでもないのだろうけど。

自宅までの道のり、今日の思い出をふたりで語り合った。本当に楽しいだけの一日だった。

久しぶりにこんなに笑ったような気がする。そしてそれと同じくらいときめいた。

彼への気持ちが特別なものになっているのを、もう否定できない。

まっすぐに前を見て運転を続ける神永さんをこっそり見つめてそう自覚する。

けれど彼はお客様(になりそうな人)で、大会社の御曹司だ。

そうでなくても大人な彼の隣にわたしなんかが似合うとは到底思えない。

久しぶりの恋。だけれどすでに〝失恋フラグ〟が立っている。

どうしてこんな手の届かなさそうな人、好きになっちゃたんだろう。

言葉を交わすたびに、好きという気持ちと同時に諦めなきゃという気持ちがせめぎ合う。

複雑な思いを抱えたわたしを乗せた神永さんの車は、ゆっくりとわたしのマンションの前で停車した。
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