【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「着いたよ。本当なら食事に誘いたかったんだけど、この後仕事があるんだ」
「いえ、お礼は十分してもらいましたから。今日は本当に楽しかったです」
感謝の気持ちが伝わるように、満面の笑みを彼に向けた。
「そう、俺はもっと一緒にいたかったのにな」
まっすぐに見つめられると本音が漏れそうになる。
わたしだって、もっと一緒にいたい。
けれどからかわれているだけだ。素直に喜ぶなんてマヌケだ。
「そうですか」
そう一言返したわたしは、唇を噛んで下を向いてしまった。最後にこんな態度をとるべきじゃないのに。
あやうく変な空気になりそうだった。
けれど神永さんがわたしの頬に何か柔らかいものを押し付けてきた。
顔を上げると、そこにはピンク色のペンギンのぬいぐるみ。
「わぁ! かわいい」
思わず声を上げる。さっきまでのモヤモヤが一瞬にして吹き飛ぶほどのかわいさだ。
触りたくて手を伸ばしたけれど「待って」と言われてお預けされた。
神永さんはそのぬいぐるみの左手をぎゅっと握ってみせる。
「ワァ! カワイイ」
「すごい。しゃべった」
それはさっきしゃべったわたしの声を録音したものだ。ピンクのペンギンが口をパクパクさせている。