【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「どう? 気に入った?」
「はい! とっても」
神永さんに差し出された、ペンギンを受け取って左手を握ってみた。
「ワァ! カワイイ」
「あはは。わたしってこんな声ですか?」
「うん。そっくりだと思うけど」
何度も押して、そのたびにふたりで笑った。最後は何が面白いのかわからないほどだった。
「よかった。初めてのデートの記念に渡せて」
神永さんの言った〝デート〟という言葉にドキリとする。最後までからかうつもりなんだ。
せっかくペンギンでいい気分だったのに……。
悔しくなったわたしは、ちょっと彼を困らせようとした。
「そうやってデート、デートって言ってますけど、わたしたちつき合ってませんから。好きだって言われたわけじゃないし」
ここぞとばかりに高飛車を演じた。きっと彼なら笑って流すだろう。
「でもデートはデートだと、俺は思うんだけどな。
君はどう思っていようと俺にとっては今日の君との時間は紛れもなくデートだった」
そんな真剣な目で見ないでほしい。どうして勘違いさせるようなことばかり言うの?
好きな気持ちが悔しさにとってかわられた。こうなったらとことん困らせてしまえ。
普段の自分からは考えられないほど、わがままで自分勝手な気持ちが抑えられない。
「だったら、このペンギンさんに気持ち吹き込んでくださいよ。あま~くささやいてください」
そんな恥ずかしいことできっこないはずだ。