家庭訪問は恋の始まり
「じゃ、夕凪、また電話するよ。」

玄関でそう言うと、彼はまた私を抱き寄せる。

「はい。」

私は彼の腕の中で返事をした。

彼が、玄関を出た後に思う。


これはもうごまかしようがない。

私は、瀬崎さんが好きだって。

だけど、瀬崎さんは嘉人くんの保護者。

春までは、絶対に特別な関係になってはいけない。


だけど、春になれば、いいの?

前の学校でも聞いた事がある。

《 あの先生、
教え子のお母さんと結婚したのよ 》

その先生はすでに50歳を過ぎていて、結婚して15年ほど経っていたにも拘らず、陰口のように言われていた。

もし、私が瀬崎さんとどうこうなれば、同じようにいつまでも言われるのは目に見えている。

私はそれを耐える覚悟はある?


私には、まだその自信はなかった。


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