家庭訪問は恋の始まり
その後、6時半まで仕事をして、嘉人くん家に向かう。
玄関のチャイムを押すと、インターホンから瀬崎さんの声が聞こえる。
『はい。今、開けるよ。』
すると、すぐに玄関が開き、また嘉人くんが顔を覗かせる。
「夕凪先生、パパが、
『どうぞ上がってください』だって。」
嘉人くんはそう言うけれど、やっぱりこの時間に家に上り込むわけにはいかない。
「ううん。
先生、嘉人さんのノートを届けに来ただけ
だから。
嘉人さん、もう忘れ物しないでね。」
「うん。
でも、パパ、先生の分もご飯作ってるよ。
先生、また一緒にご飯、食べよ。」
うーん、でもなぁ…
私が返事に困ってると、エプロンで手を拭きながら、瀬崎さんが現れた。
「遠慮しないで、上がって。」
「え、でも… 」
「ムニエル、焼けたから食べるよ。ほら!」
と、瀬崎さんに手を取られ、引っ張られるので、私は床を汚さないように慌てて靴を脱いだ。