家庭訪問は恋の始まり
「うん。
先生も嘉人さんの事、ずっと忘れないよ。」

私はもう一度、嘉人くんを抱きしめ、床に置いた花束を持ち上げて、立ち上がった。

私は、そのまま、花道を通り抜けて、校長室へと向かった。


・:*:・:・:・:*:・


離任式は終わったが、異動は4月1日だ。

離任式後も、午後は通常勤務が続く。

職員室でお弁当を食べていると、武先生が教えてくれた。

「今日の花束贈呈、1組の子、ほとんど全員が
手を挙げたんですよ。」

「えっ?」

普段の授業では、なかなか全員の手は挙がらない。

「自閉の真央が小さく手を挙げてるのを見た
とき、夕凪先生は本当にいい先生だったん
だなぁと思いましたよ。」

「えっ?
真央ちゃん、手を挙げたんですか?」

真央ちゃんは、授業でも自分から手を挙げた事は一度もない。

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