家庭訪問は恋の始まり
「そんなのあと数日でしょ。
黙ってれば分かんないのに、真面目だねぇ。」

武先生は呆れたように言う。

「いえ、そんな事は… 」

「ま、いいや。
とにかく、誰になんて言われても、負けちゃ
ダメだよ。
夕凪先生が幸せにならないと、俺が諦めた
意味がないからね。」

武先生はそう言って私の頭をぽんぽんと撫でる。

そういえば、この1年、武先生の頭ぽんぽんに翻弄されたなぁ。

その後、私たちは、2人で荷物を抱えて2階の2年生の教材室へ向かった。

春休み中は、夏休みと違ってやる事がたくさんあるけど、子供がいない分、精神的には気楽に仕事ができる。

明日は、教室の教師机を移動する。

午後、私は、机の中を空にして引き出しの中まで雑巾で拭く。

立つ鳥跡を濁さず。

私は、教室の隅々まで掃除をする。

ロッカーの中、棚の上、棚の中、掃除道具入れの中。

自分の家でもこんなに掃除した事ないのに。

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