家庭訪問は恋の始まり
「いつも嘉人から聞いてるから、初めて
お会いする気がしないわね。
どうぞこちらへ来て、一緒にお喋り
しましょ。」

そう言っていただいて、私は再び立ち上がり、瀬崎さんに続いて部屋に入った。

座卓を囲むように瀬崎さんと並んで座る。

「父さん、母さん、俺、彼女と結婚しようと
思う。」

瀬崎さんにそう言ってもらって、胸の中がじんわりと暖かくなる。

「夕凪さんは、本当にこいつでいいん
ですか?」

お義父さんが初めて口を開いた。

「はい。」

「世間は、あなたが思ってるよりずっと
厳しいと思いますよ。
意地悪な陰口に晒されて、あなたは生きて
いけますか?」

それは、もっともな質問だ。

「覚悟しています。
それでも、私は瀬崎さんと嘉人くんと一緒に
いたいと思います。」

私は顔を上げて答えた。

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