家庭訪問は恋の始まり
「あなたが転勤するって学校で聞いてきた日、
本当に大変だったんですよ。
泣くし、暴れるし、叫ぶし。
だから、嘉人の心をこんなに掴んだあなたに、
本当に会ってみたかったの。」

お義母さんが、優しく微笑んでくださる。

「恐縮です。」

「だから!」

ん? 何?
それまでの優しい口調とは打って変わって、お義母さんが言葉に力を入れる。

「絶対に嘉人から離れないでくださいね。
これの母親が出ていっても、嘉人は平気
でしたけど、あなたが出て行ったら、嘉人は
きっと壊れてしまうでしょうから。」

「はい。」

私は、瀬崎さんの奥さんである前に、嘉人くんのお母さんなんだ。

「一応、確認しておくけど、この先、自分の
子ができても、分け隔てなく嘉人の事も
かわいがってくださるわよね?」

お義母さんの物腰は柔らかいけれど、もう笑ってはいない。

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