家庭訪問は恋の始まり
そんなある日、俺が帰ろうとすると、職員玄関で実習生たちに会った。

奴らも丁度帰るところらしい。

「失礼します!」

実習生たちが挨拶をして出ていく。

俺も「お疲れ様。」と奴らを見送り、外に出た。

すると、校門の前で手を振る男がいる。

学生か?

視線の先を辿ると、先程の実習生たちを見ている。

友達か。

そう思った直後、神山が駆け出した。

嬉しそうに男と腕を組み、門を出ていく。

ああ、あいつの彼氏か。

その時、初めて、俺の中に蠢くドロドロとした感情に気が付いた。

ああ、これは嫉妬だ。

失恋してから、自分の想いに気付くなんて、いい歳して、なんて間抜けなんだろう。


俺は、その後も気付けば神山を目で追っていたが、想いを告げる事はなく、神山も俺の存在にすら気付く事なく、4週間の実習を終えて、俺の前から去っていった。

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