家庭訪問は恋の始まり
席に着いて程なく、店員さんがメニューを持って現れた。

「あっ」

私は思わず、声を上げてしまった。

「いらっしゃいませ。
お客様は先生でしたか。」

その人はにこやかに微笑む。

「こちらのお店で働いていらっしゃったん
ですね。」

「いえ、普段は本社勤務なんですが、今週は
ギャルソンが夏休みなので、
応援に駆り出されてるんです。
先生はデートですか?」

「いえ、こちら、学年主任の木村武先生です。
先生、こちら、瀬崎嘉人さんのお父様です。」

私は双方を紹介する。

そう、店員さんは、嘉人くんのお父さんだった。

「そうでしたか。
嘉人がいつもお世話になっております。
うちは、デートに利用していただく方が多い
ので、てっきり先生方もカップルなんだと
思ってしまいました。
失礼いたしました。
ご注文がお決まりの頃にまた参ります。
ごゆっくりどうぞ。」

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