家庭訪問は恋の始まり
一礼して嘉人くんのお父さんが下がっていく。

武先生は、それを目で追っていた。

「先生?」

私が声を掛けると、はっとしたように顔を戻して、いつものにこやかな武先生に戻った。

「夕凪先生、好き嫌いはなかったよね?
コースでいい?」

「はい、構いませんけど、いいんですか?」

「もちろん。
瀬崎さんもおっしゃってたよね?
ここはデートコースだって。
侘しい独身男のために、擬似デートに
付き合ってください。」

武先生はいたずらっぽく笑う。

「またまたぁ。
武先生なら、声を掛ければいくらでも女の子、
寄ってきますよ。」

「そういうのは、好きじゃないんだ。
デートは、やっぱり好きな人とじゃなきゃ。」

まぁ、確かに。

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