家庭訪問は恋の始まり
「先生、コーヒーでいいですか?」

瀬崎さんが聞いてくれる。

「いえ、お構いなく。」

私が遠慮すると、

「俺が飲みたいんです。
少し、付き合ってください。」

瀬崎さんは微笑んだ。

今日はリビングのソファーに座るように勧められ、私はそこで瀬崎さんを待つ。

程なく、瀬崎さんがコーヒーを持ってやってきた。

テーブルに「どうぞ」と、コーヒーを置くと、少し間を空けて隣に座る。

「先生、すみません。」

ん?

私はコーヒーを混ぜていた手を止めて、顔を上げた。

すると、隣の瀬崎さんと間近で目が合い、慌てて逸らす。

「あの、何がでしょう?」

私はコーヒーを見つめながら、尋ねた。

「嘉人の事で相談なんて、嘘です。」

「え?」

私は、思わず、また顔を上げてしまった。

< 90 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop