エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
#4 環との出会い　―過去・梓side―
私と倉持環の出会いは、小学校五年生の時に遡る。

　ある日の学校帰り、同じ位の年齢の男の子が路地裏で柄の悪いの男の人たちに絡まれているところを偶然見つけてしまった。
　男の子は黒縁の分厚い眼鏡をかけて、目の下まで前髪を伸ばしていた。男の人たちは目つきが悪くて、いかにも怖そうな人たちだった。学ランを着ていたから、たぶんどこかの中学生か高校生だろう。

「お前、暗くて気持ち悪そうだな」
　一番体格の良い男の人が、男の子の肩を突き飛ばした。男の子は電柱に体を打ち付け、痛そうに肩を押さえている。
「ちょうど嫌な事があってむしゃくしゃしてたんだ。お前、付き合えよ」
　体格の良い男の人が、男の子の腕を無理矢理掴んで、路地裏の奥へと連れて行こうとしていた。

　どうしよう、このままじゃ、あの男の子は、何をされるか分からない。でも、私一人じゃどうしようも出来ない。今居るところは大きな通りから外れた住宅街で、すぐ近くに助けを求められそうな大人も居ない。
　
　話した事なんて無い男の子を助けて自分が危険にさらされるよりは、このまま見なかったことにして、逃げてしまおうか。そんな考えが一瞬頭を過ぎった。
　でも、このまま見捨てたら、私はきっと後悔する。自分の中の正義感が勝り、私は意を決して、その男の人に向かって叫んだ。

「あの！」
　男の人は私の声に反応して振り返り、「あ？」と機嫌の悪そうな声で返事をした。
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