エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
#1 再会は突然に
11月1日。過ごしやすかった季節は過ぎ、朝晩はコートが無いと肌寒く感じる季節になった。私はトレンチコートにピンクのマフラーという格好で、他に出勤してくる沢山の社員の人と一緒に住忠商事のビルのエントランスをくぐる。
住忠商事。商社としては総合商社の部類に入り、業界での立場は中堅商社といったところだ。昔は「お堅い商社」で有名だったらしいけれど、数年前にトップが代わってから、IT系の新しい商材も積極的に取り扱うようになった。
今ではIT専門の子会社を設立するまでに至り、IT系の事業のほとんどは子会社に移管しているけれど、海外の新しいソフトウェア製品の仕入れなどは今でも住忠商事で行っている。
そんな私は、5年前、新卒で「ITソリューション部」に配属され、営業事務として働くことになった。英文学科を卒業したというだけで、正直、ITなんて全く知識も無かったし、最初はIT用語も製品のことも理解するのも必死だった。それでもこの5年間、営業事務一筋でなんとか仕事を頑張っている。