エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
それから明くる日も明くる日も私は放課後に倉持くんと一緒に猫の餌を買い、茶トラの猫と仲良くなるために奮闘することになった。

 倉持くんが餌をあげるところに私が行くと警戒されてしまうので、なるべく倉持くんと一緒になって猫が出てくるのを遠巻きに待った。

 初めて私の前でもご飯を食べてくれたのは猫通いが始まってから一週間、そこから徐々に距離を縮めていき、少しだけ触らせてくれるようになったのは3週間。ようやく懐いてくれたのは一ヶ月が経った頃だった。

「やった、やったよ」
 猫が私にすり寄ってくれるのを見ると感動して泣きそうになる。猫は柔らかくて触り心地が良くて、癒やされた。
「良かったな」
 倉持くんも嬉しそうに口許を緩ませた。
「うん、本当に良かった。ありがとう」
 
 私が仲良くなったのは猫だけじゃなかった。一ヶ月も一緒に過ごしていると、倉持くんとも自然と仲良くなっていった。

 最初の方はぎこちなくて、会話も少なかったけれど、倉持くんが読んでいるコンピューターの本の話や、学校での勉強の話、テレビの話、他愛のない話をしていくうちに、倉持くんも少しずつ打ち解けてくれるようになった。

 特に倉持くんは本当にコンピューターに興味があるらしく、将来は海外に行ってコンピューターの勉強がしたいと言った。今からそこまで考えているのが凄くて、私は倉持くんのことを尊敬した。

 相変わらず自分の家族のことは話してくれなかったけれど、最初の頃に比べると私たちはすっかり友だちと呼べる仲になっていたと思う。
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