エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
「先輩、大丈夫ですか」
 昼休み、デスクの上に置かれたクッションに顔を埋める私に、桃子ちゃんが横から話しかけてきた。
「大丈夫じゃない」
 クッションに顔を埋めたまま、死にそうな声で私は頭を横に振った。

「あの、良かったらお弁当を買ってきたんですけど、食べますか」
「えっ!」
 桃子ちゃんの言葉に反応してパッと顔を上げると、桃子ちゃんは手に持っていた社内販売のお弁当とお茶が入ったビニール袋を私に差し出した。

「良いの?」
 お弁当の匂いに、お腹がぐうーっと鳴る。急にお腹が減ってきて、桃子ちゃんが天使に見えた。
「先輩、最近まともに食事も取ってないですよ。ご飯を食べないと美容に良くないです」
「あ、ありがとう……」

 私はありがたくお弁当を頂戴すると、中に入っていた幕の内弁当をあっという間にたいらげた。そんな私を桃子ちゃんは呆気にとられて見ている。自分でも女っ気がない食べ方だとは思うけれど、そういうのを気にしている余裕すらない。

「倉持さんの仕事、大変なんですね」
「うん。今より残業代がかせげるよ。一緒に働く?」
 桃子ちゃんは慌てて手を振った。
「い、いえ。私は先輩ほど要領が良くないので、今の仕事で一杯一杯です」

 今まで残業時間が殆ど無かった営業事務も、環が入ってきた時に比べると残業時間が増えている。これ以上仕事を増やしたくないのが本音なのだろう。
「そうだ! 今週の金曜は定時退社だから、その時くらいは先輩も仕事のことを忘れて早く帰りましょうよ」

 桃子ちゃんに言われてカレンダーを見ると、確かに今週末は月に2回の定時退社日だ。本当は定時退社している余裕なんてないんだけれど、確かに桃子ちゃんが言うとおり、定時退社日くらいは定時で帰ろう。いや、帰ってやる。さすがに環も許してくれるだろう。

「うん、そうするよ。定時退社日に定時退社するのは社員の権利だもんね」
 その時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。私は桃子ちゃんに、「お弁当ありがとう」と言うと、ゴミをさっと片付けて午後の仕事に取りかかった。
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