エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
#6 忘れられない人 ―環side―
……俺には、小学五年生の頃からずっと忘れられない人が居る。
ずっと独りの世界に閉じこもっていた俺を外の世界へと引っ張り出してくれた人。
――困ってる人を助けなきゃって思ったから。
――環、って呼んでも良い? もう、友だちでしょ? 私たち。
――私も環と同じ立場だったら、他の人と話すの辛くなると思う。みんなにとっては当たり前でも、自分は違うんだって、孤独を感じると思う。
――もう二度と会えなくなる訳じゃないもん。
明るく自分を飾らない彼女と話していると、周りに心を閉ざしていた俺も、少しずつ彼女に心を開けるようになっていった。
一緒に居られる期間は短かったが、初恋というものがあるとしたら、俺の初恋は紛れもなく彼女だった。
父さんの都合で転勤してからも、俺と彼女はメールで交流を続けることになったけれど、彼女とはすぐに連絡が取れなくなってしまい、その後の消息を知ることは出来なくなってしまった。
何度連絡してもエラーになって返ってきて、毎日がもどかしくて、彼女に何かあったのではないか、あるいは、俺と連絡するのが急に面倒になってしまったのかと、立ち直れないほど落ち込んだ。
それでも、月日は流れ、俺を取り巻く環境が変わっていっても俺の心の中のどこかにはいつも彼女の姿があった。ふとした時に、あの頃の記憶が蘇って、今、彼女はどうしているだろうと思った。
年頃になっても恋愛に積極的じゃない俺を、周りは不思議がった。女の子と付き合うのは当たり前だし、今の環なら女の子も放っておかないのに、と。