エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
エレベーターで30階に上がり、ITソリューション部のフロアに足を踏み入れる。部全体では営業が30名程度、営業事務が10名程度の部署だ。
始業時間まで後10分を切り、ほとんどの社員が席についてパソコンを眺めたり、スマートフォンを弄ったりしている。
私は営業事務専用のデスクへ向かい、一番端の席に着いた。
「おはようございます」
既にいる他の営業事務の子たちに挨拶すると、明るい声で「おはようございます」と返事が返ってきた。私には四つ上の先輩が一人居るだけで、他の事務の子は皆私より若い。唯一の先輩も現在は産休だから、今は私が一番のベテラン営業事務、ということになる。
席に着くなり、メイクもネイルも服装もばっちりの桃子ちゃんがひそひそ声で話しかけてきた。
「先輩、今日、新しい営業の男の人が入って来るみたいですよ」
「え、こんな時期に?」
そういえば、数日前にそんな噂を聞いたような気もする。面倒な見積書の作成に追われてすっかり今の今まで忘れていた。
「そうなんですよー、しかも、さっきお手洗いから帰るときに、部長がその男の人と歩いて応接室へ入っていくところを見たんですけど、めちゃくちゃ仕事できそうなイケメンでした。はあー、朝礼楽しみだなあ」
桃子ちゃんがフロアに隣接した応接間の方をちらりとみやる。応接室はドアが二つあり、廊下とフロアにそれぞれ一つずつついて居る仕様になっている。相変わらず桃子ちゃんは肉食系だなあ、と私は心の中で苦笑した。