エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
僕と梓の間に沈黙が流れる。雨が降り始めたらしく、サーッっと言う雨の音が窓越しに聞こえてきた。
 
 二人でチョコレートを食べ終えると、僕は話題を変えようと、
「そうだ。コンピューターを見る?」
と、ソファから立ち上がった。
「あ、うん! 見せて。凄く性能の良い奴なんだよね」

 梓も呼応して立ち上がり、ペットボトルをテーブルの上に置くと二人で廊下へと戻った。コンピューターがある部屋へ案内し、締め切ったカーテンを開けると、梓は驚いて感嘆の声を上げた。

「うわ、凄い。コンピューターってこんな凄いものなの?」
 物珍しそうにサーバーに繋がれた大画面のコンピューターを見て回る。僕は毎日見ている光景だから、彼女の反応は新鮮だった。

「この黒い奴は何?」
「サーバー」
「さーばー?」
「うーん、コンピューターの情報を色々処理する機械って言えば良いのかな」
「難しくてよく分からないけど、学校にあるやつより全然凄いね」
「まあ、父さんがIT企業に勤めてるから」
「あいてぃーきぎょう?」
 慣れない言葉を言おうとしている梓が可笑しくて、小さく笑った。

「まあ、コンピューターを専門に仕事をしてるってこと」
「へえー……」
 梓はそれ以上話について行けないのか、その言葉を言ったきり、またキョロキョロと部屋を見回し始めた。

 すると、たまたまコンピューターの影になっているスペースに写真立てが飾ってあるのに気付いたらしく、
「ねえ、これって誰の写真?」
 と写真を指さして問いかけてきた。僕は慌てて写真立てを隠すように下に伏せる。
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