エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
「……やっと、ゆっくり話せるな。二週間、まともに話せなくて本当に悪かった」
「本当だよ。いくら何でも忙しすぎでしょ、環」
「悪い。でも、まさかお前にまた会えるなんて思わなかった。しかも、俺の担当になるなんて」
「私も、本当にそう思う」

 二人同時に視線を上げ、目が合った。昔の環ならきっとじっと見ていられたのに、急にがらりと雰囲気が変わってしまった環を目の当たりにすると、何故か私が緊張して見つめていられない。ふっと目を逸らし、カラトリーに目を落とす。

「じゅ、十数年の間に一体何があったの? 突然連絡が取れなくなっちゃうし、何かあったのかと思って心配したよ」

「それは俺の台詞だ」
 環の語気が思いのほか強くて、私は少しひるんでしまった。

「だ、だって何度か連絡したんだけど返ってきちゃったんだもん」

 環は眉を寄せ、大きくため息を吐いた。
「俺も何度も連絡した。でも、駄目だった。サーバー同士が何かしらの理由でかみ合わなかったんだろう」

「でも、こうして会えて良かった。本当に嬉しいよ」
 私が微笑むと、環の険しい表情が少しだけ和らいだ。

「……ああ。梓が元気で良かった。あの時、二度と会えなくなる訳じゃない、って梓が俺に言ってくれたことは、本当だったんだな」

 ちょうどその時、ワインのグラスとボトルが運ばれてきた。店員がそれぞれのグラスにワインを注ぎ、私たちは軽くグラスを傾けて静かに乾杯する。

「それにしてもどうしてそんな雰囲気が変わっちゃったの?」

 それは、私がずっと聞きたいことだった。環はワインを一口のみ、少し間を置いて、ぼそりと、
「父さんが再婚したんだ。アメリカ人と」
 と呟いた。私は思わず飲みかけていたワインを吹き出しそうになり、目を丸くして環を見た。

「えっ、お父さんが?」
「ああ」
「それ、何年前の話?」
「梓と離れてから一年位経った頃だな」

 環はお母さんが亡くなってからずっと人に心を閉ざしていた。新しいお母さんの存在をすんなり受け入れられたとは到底思えない。
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